如意輪温泉

　あまりにも分かりにくい路地裏にあるため、地元のテレビ局が秘湯特集で取り上げたほどの如意輪温泉。中部地区公民館の近くにあり、他の地区の方や観光客は確実に道に迷うと思われる立地です。

　実はこの如意輪温泉、私の実家の近くにあり、小学1～3年生の頃はよく行っていました。浴場に多い時は7～8人いて、混んでいた記憶があります。私の実家では、如意輪温泉を「佐藤さん方の風呂」と呼んでいます。共同温泉なんですが、本当に民家のお風呂といった趣です。ちなみに、小学4年の頃からは、さらに実家に近い「伊藤さん方の風呂」に通うようになりました。こちらは、そのものズバリ民家の浴場で、何と30円で入れました。今でも、帰省するとよく行くお風呂です。

　入浴料金を「佐藤さん方」に払い、約10年ぶりに如意輪温泉の扉を開きます。　扉の雰囲気、浴場内の雰囲気、10年前と変わっていません。　ただ、少し狭くなった感じがします。　他に入浴客がいない中、浴槽はこんなに小さかったんだ!!　と感傷に浸ります。

　…ぬるい!!　昔からそうだったのですが、このお風呂、入るたびに温度がかなり違っていた記憶があります。時には熱くて入れないこともありました。でもそこは、狭い浴槽の強み。すぐにお湯を入れ、ちょうどよい湯加減に。

　「こんにちは」と中学生ぐらいの男の子がやって来ました。近所なのですが、顔に見覚えがありません。10歳くらい年下ですから、私がかつてこの温泉に通っていた頃はまだ3～4歳ぐらいだったことになります。そりゃあ、分かりません。

　住む人、温泉に入る人が変わっても、あたたかい温泉のたたずまいは変わらず、そこにありました。