鉄輪の中でも、観光客が多い地獄めぐり地帯やいでゆ坂から一歩入ると、ごく普通の、それでいて昭和の香り漂う住宅街が広がります。谷の湯は、そんな住宅街の真っ只中にあり、2Fが公民館、1Fが半地下の浴場となっています。手書きの看板がいかにも昭和、いやむしろ大正、明治といった感じです。さて、階段を降りて入浴するといたしましょう。 「お客さん、料金払って~」 上から、かすかに"おじょうさん"の声が聞こえてまいりました。慌てて引き返します。 「はい、100円ね」 浴場の隣の民家が"番台"のようになっていて、そこで入浴料を払います。「入浴料金は上家にてお仕払ひすませてからお入りくださいませ」と毛筆で丁寧に書かれた、なぜか旧仮名遣いの貼り紙。扉の向こうには、かなりお年を召した"おじょうさん"がいらっしゃいました。
浴場に入ると、いきなり大きな如来像が!! ギロリと監視されている気分を味わいつつ、服を脱ぎます。浴場は打ちっぱなしのコンクリートになっていて、歴史のある感じがいたします。それにしても浴室の傾斜がすごい!! 脱衣所も少し傾いています。この傾斜のおかげで水はけは良好です。
お湯はかなり透明で、細かな泡が体にいくつも付いてきます。洗い場が濡れており、先客がいたと思われるのですが、一番風呂の気分を味わえました。目の前(正確には、斜め45度上)には、大きな如来像。仏様を見上げると、ものすごく謙虚な気持ちになってまいります。人間、所詮ちっぽけなのだ、何事もほどほどに、まじめに、という気持ちになります。
||別府八湯
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