小倉薬師温泉丘の湯は、男湯と女湯を合わせて民家1軒くらいの広さしかない、比較的小さな温泉です。表に効能書きがあり、そこには「特別原爆症」とあります。隣の神丘温泉とともに、原爆による症状に効能があるのだそうです。目の前には別府原爆センターがあります。別府の温泉は、人を救う恵みの湯でもあるのです。
時刻は夕方6時過ぎ、もう外が暗くなる時間帯なのに、男湯の電気がついておらず真っ暗でした。浴場に入ってみると、誰もいません。私が電気をつけて、さっそく入湯。
木造の湯船に浸かり、かなり熱めの温泉に浸かっていますと、先ほどまで無人だったのが嘘のように、次から次へとお客さんが入ってきました。皆さん、近所に住んでいる年配の方でした。おそらく、テレビで大相撲を見てから、こちらに来られたのでしょう。そう言えば、大相撲や水戸黄門の時間は、共同浴場が比較的空いているんですよね。終わった途端に入浴客が増える、これは別府中どこでも同じのようです。
「にいちゃん、この辺じゃ見かけん顔じゃけど、どこの人?」 「石垣の人間です。今は東京に住んでいるんですけど、帰省していまして」 「別府の人間やん、石垣とか言いなさんな」 近所の人と楽しく語らいます。入浴客にはいろいろなタイプの方がいて、あまりしゃべらない人もいれば、一見しゃべらなさそうに見えて誰とでも気さくに話す人もいれば、近所の人とはよくしゃべるけれども初対面の私とは全然しゃべらない人もいました。何と言いますか、社会の縮図ですね。
||別府八湯
|